最近の労使間トラブルに関する裁判例


裁判例26:退職した従業員に対する損害賠償請求訴訟の提起の不法行為該当性

横浜地方裁判所平成29年3月30日判決(判例タイムズ1443号222頁)

 本件は、元従業員の「虚偽の事実をねつ造して退職し、就業規則に違反して業務の引継ぎをしなかった」という行為が不法行為に当たるなどと主張して、会社が元従業員に対し、損害賠償を求めた事案である。

 横浜地方裁判所は、以下のように判示して、不法行為に該当するとした。

 元従業員の退職に至る経緯及び退職後の就労状況に照らすと、会社において、元従業員の不法行為があるものと認識したことについて全く根拠がないとまで断じ得ないとしても、会社主張の元従業員による不法行為によって会社が主張するような損害は生じ得ない。このことは、通常人であれば容易に知り得たと認められる。それにもかかわらず、元従業員の月収の5年分以上もの大金の賠償請求をすることは、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くというべきである。したがって、本訴提起は、違法な行為となる。