債権回収に関する基礎知識及び裁判例


債権回収に関する基礎知識

・お金をかけない簡易な信用調査の方法を知りたい。

→不動産登記及び会社登記から多くのヒントが得られます。

国税の滞納処分、街金融の抵当権設定、多数の抵当権の設定、取締役の交代、本店の移 転等の情報があれば、

取引開始及び継続は黄色(場合によっては赤色)信号です。

 

・自社商品の引揚げは、どのような場合にできるか知りたい。

→契約解除、所有権留保の実行などの場合です。なお、買主の意思に反して実力で持ち去 ることは違法です。

引揚妨害に遭った場合の対抗手段として、仮処分の手続等が必要となる場合もあります。

 

・他社商品の引揚げは、どのような場合にできるか知りたい。

→代物弁済の要件を充たす場合です。

ただ、詐害行為取消権または否認権を行使される危険があります。

 

・取引先の債権(売掛金など)を代わりに取り立てて回収する方法を知りたい。

→代理受領という方法があります。代理受領は、債権回収の手法の一つで、具体的には、債権者(例 下請け)が債務者(例 元請け)の第三債務者(例 施主)に対して有する債権を債務者に代わって取り立て、その支払いを受けることについて、債権者と債務者が合意し、これについて第三債務者の承諾を求めるという手法です。

 

代理受領の弱みを把握しておきたい。

→第三債務者(例 施主)の債務者(例 元請け)に対する相殺の意思表示は、原則として、代理受領に優先します(仙台高判平成21年10月28日参照)

→代理受領にかかる債権であっても、後に、債務者が債権者に当該債権を譲渡した場合、詐害行為取消の対象となり得えます(最判昭和51年7月19日参照)。

 

支払督促の申立てのメリットを知りたい。

①債務者の審尋(民訴法386条1項参照)、証拠調べをしないため、迅速に債務名義を取得できる。

※民事執行法22条(債務名義)

 4号:仮執行の宣言を付した支払督促

 7号:確定判決と同一の効力を有するもの

※民事訴訟法396条(支払督促の効力)

仮執行の宣言を付した支払督促に対して督促異議の申立てがないとき、又は督促異議の申立てを却下するとの決定が確定したときは、支払督促は、確定判決と同一の効力を有する。

②申立手数料が訴状の半額。ただし、督促異議の申立てにより訴訟に移行した場合、残りの半額を納める必要がある。

③支払督促の申立て時に時効中断の効力が生じる(民事訴訟法384条、395条参照)。ただし、債権者が民事訴訟法392条に規定する期間内に仮執行の宣言の申立てを しないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない(民法150条 )。

 

・支払督促の申立てのデメリットを知りたい。

①基本的に金銭債権に限られる(民事訴訟法382条参照)。

②行方不明の債務者に対しては申立てができない(民事訴訟法38条参照)。

③債務者から異議の申立てがあり訴訟に移行した場合、債務者の住所地を管轄する裁判所に出向く必要がある(民事訴訟法395条参照)。

④債務者から異議の申立てがあると、最初から訴訟提起した場合に比べて解決までに時間がかかる。


経営者保証に関する基礎知識


Q1:経営者保証に関するガイドラインの作成時期、作成主体について教えて下さい。

Q2:経営者保証に関するガイドラインの内容について簡潔に教えてください。


Q3:経営者保証に関するガイドラインに法的拘束力はありますか。

Q4:経営者保証に関するガイドラインの適用要件について教えてください。


Q5:経営者保証に依存しない融資の一層の促進のため、主たる債務者及び保証人はいか なる対応に努めなければならないのでしょうか。

Q6:Q5の①法人と経営者との関係の明確な区分・分離とは、具体的にはどのようなことですか。


Q7:Q5の②財務基盤の強化とは、具体的にはどのようなことですか。

Q8:Q5の③財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保とは、具体的にはどのようなことですか。


Q9:経営者保証に依存しない融資の一層の促進のため、対象債権者はいかなる対応に努めなければならないでしょうか。

Q10:Q9の代替的融資手法は、いかなる要件が揃った場合に活用されますか。


Q11:債権者が経営者保証を求めることがやむを得ないと判断し、経営者と保証契約を締結する場合、対象債権者はどのような対応に努めるべきですか。

Q12:対象債権者は、ガイドラインの趣旨を尊重して、どのような内容を保証契約に盛り込むべきですか。


Q13:主たる債務者及び保証人は、既存の保証契約の見直しの申入れをする際、どのように対応すべきですか。

Q14:債権者は、主たる債務者及び保証人から、既存の保証契約の見直しを求められた際、どのように対応するべきですか。


Q15:主たる債務者(会社)が事業承継に際して、後継者(後継社長)の個人保証を提供せずに対象債権者から新たに融資を希望する場合、主たる債務者の後継者にはどのようなことが求められますか。

Q16:対象債権者は、事業承継に際して、前経営者が負担する保証債務を後継者に引き継がせるか否かを判断する際、何を考慮すべきですか。


Q17:対象債権者は、事業承継に際して、A16の事情を考慮した結果、後継者に保証契約を引き継がせることがやむを得ないと判断した場合、保証債務の範囲について、どのように考えるべきですか。

Q18:対象債権者は、事業承継に際して、前経営者から保証契約の解除を求められた場合、どのようなことを考慮して、保証契約の解除の是非について考えるべきですか。


Q19:A4の要件を充たした場合、保証人は、常に経営者保証に関するガイドラインに基づいて保証債務を整理できるのですか。

Q20:主たる債務について準則型私的整理手続を利用する場合、保証債務はどのように整理するべきですか。


Q21:主たる債務について法的整理手続が申立てられ、保証債務についてのみ整理する場合、どのように整理すべきですか。

Q22:対象債権者は、どのような要件を充足する場合に、保証債務に関する一時停止や返済猶予(以下「一時停止等」という。)の要請に対して、誠実かつ柔軟に対応するべきですか。


Q23:主たる債務と保証債務について、準則型私的整理手続による一体整理を図る場合、どのような事情を勘案し、経営者の交代を求めるか否かを決すべきですか。

Q24:準則型私的整理手続申立時の経営者が、引き続き経営に携わる場合、どのような形で、経営責任の明確化を図るべきですか。


Q25:対象債権者は、保証人の手元に残すことのできる残存資産の範囲について、どのような点を総合的に勘案して、決定すべきですか。

Q26:Q25の決定の際、保証人に要請されることは何ですか。


Q27:支援専門家は、Q26の保証人による表明保証に関して、どのように関与しますか。

Q28:保証人の残存資産(Q25参照)の範囲を決定するに際して、保証人や債権者が留意すべき点は何ですか。


Q29:保証債務の弁済計画案には、どのような内容を記載するのですか。

Q30:保証人が、対象債権者に対して保証債務の減免を要請する場合の弁済計画にはどのような内容を記載するのですか。


Q31:対象債権者は、どのような要件を充足した場合、保証人からの保証債務の一部履行後に残存する保証債務の免除要請について誠実に対応すべきですか。

Q32:経営者保証に関するガイドラインは、いつから適用されていますか。


Q33:対象債権者は、経営者保証に関するガイドラインによる債務整理を行った保証人について、当該保証人が債務整理を行った事実その他の債務整理に関連する情報(代位弁済に関する情報を含む。)を信用情報登録機関に報告、登録するのですか。


債権譲渡(担保)・債権回収に関して押さえておきたい裁判例


裁判例1:譲渡禁止特約と債権差押

最高裁昭和45年4月10日判決

裁判例2:物上代位と差押

最高裁昭和60年7月19日判決


裁判例3:抵当権に基づく物上代位と債権譲渡

最高裁平成10年1月30日判決

裁判例4:動産売買先取特権に基づく物上代位と債権譲渡

最高裁平成17年2月22日判決


裁判例5:動産売買先取特権の基づく物上代位と破産開始決定

最高裁平成59年2月2日判決

裁判例6:物上代位と転付命令の競合

最高裁平成14年3月12日判決


裁判例7:物上代位権者が得た転付命令と差押の競合

最高裁昭和60年7月19日判決

裁判例8:将来債権の包括的譲渡の有効性

最高裁平成11年1月29日判決


裁判例9:将来債権の譲渡予約における債権額の特定の必要性

最高裁平成12年4月21日判決

裁判例10:取立権限を譲渡人に留保した集合債権譲渡担保の有効性

最高裁平成13年11月22日判決


裁判例11:将来債権の譲渡予約における第三者対抗要件具備の判断基準時

最高裁平成13年11月27日判決

裁判例12:停止条件型債権譲渡と否認

最高裁平成16年7月16日判決


裁判例13:将来債権の譲渡担保契約と国税徴収法24条6項(現8項)

裁判例14:動産売買先取特権と譲渡担保権の優劣

最高裁昭和62年11月10日判決


裁判例15:動産売買先取特権と請負代金債権の物上代位

最高裁平成10年12月18日決定

裁判例16:物上保証人の事前求償権

最高裁平成2年12月18日判決


裁判例17:抵当不動産の賃借人による相殺と収益執行

最高裁平成21年7月3日判決

裁判例18:登録名義を有しない自動車所有権留保の再生手続上の取り扱い

最高裁平成22年6月4日判決


裁判例19:差押えと相殺

最高裁昭和45年6月24日判決

裁判例21: 免責許可と抵当権の消滅時効

最高裁判所平成30年2月23日判決(判例タイムズ1450号40頁)

裁判例20:主債務者の破産と委託を受けた保証人による相殺

最高裁平成24年5月28日判決

裁判例22: 保証人による販売会社の留保所有権の別除権行使の可否

最高裁判所平成29年12月7日判決(判例タイムズ1452号51頁)