近時の重要判例


設計担当者の説明義務

最高裁判所平成28年5月25日決定(判例タイムズ1434号63頁)

「本件は、上記のとおり、ガス抜き配管内での結露水の滞留によるメタンガスの漏出に起因する温泉施設の爆発事故であるところ、被告人は、その建設工事を請け負った本件建設会社におけるガス抜き配管設備を含む温泉一次処理施設の設計担当者として、職掌上、同施設の保守管理に関わる設計上の留意事項を施工部門に対して伝達すべき立場にあり、自ら、ガス内抜き配管に取り付けられた水抜きバルブの開閉状態について指示を変更し、メタンガスの爆発という危険の発生を防止するために安全管理上重要な意義を有する各ガス抜き配管からの結露水の水抜き作業という新たな管理事項を生じさせた。そして、水抜きバルブに係る指示変更とそれに伴う水抜き作業の意義や必要性について、施工部門に対して的確かつ容易に伝達することができ、それによって上記爆発の危険の発生を回避することができたものであるから、被告人は、水抜き作業の意義や必要性等に関する情報を、本件建設会社の施工担当者を通じ、あるいは自ら直接、本件不動産会社の担当者に対して確実に説明し、メタンガスの爆発事故が発生することを防止すべき業務上の注意義務を負う立場にあったというべきである。 本件においては、この伝達を怠ったことによってメタンガスの爆発事故が発生することを予見できたということもできるから、この注意義務を怠った点について、被告人の過失を認めることができる。」