近時の重要判例


医師の説明義務違反

宇都宮地方裁判所令和3年11月25日判決(判例タイムズ1502号211頁)

「治療効果の点で不確実性を伴う療法を実施するに際しては、患者が、当該療法の具体的内容や、これが効果の点で不確実な療法であることなどを十分理解した上でそれでもなお当該療法の実施を選択することで初めて、患者の自己決定権に基づき当該療法が選択されたとみることができる。」

「当該患者に対する有効性及び安全性に関する重要な事実のうち、医師がその段階で認識し又は容易に認識できるものについて、医師の主観的な評価とは区別した形で、情報を提供して説明を行うことで、当該患者が本件自家がんワクチン療法を受けることの現実的なメリット・デメリットを理解した上で、本件自家がんワクチン療法を受けるか否かを判断する機会を与えるべき注意義務(以下「本件説明義務」という。)を負うというべきである。」

「本件診療契約に基づく本件自家がんワクチン療法がAの死期を早めたと認めるに足りる証拠はないから、Aの死亡自体に対してのA及び原告固有の慰謝料はいずれも認められない。」

「仮に、B医師が本件説明義務を尽くし、すなわち、上記2(1)に係るB医師の説明義務違反がなかったとしても、Aが、本件診療契約を締結せず、本件自家がんワクチン療法を受けなかったとは認められない。そうすると、前記争いのない事実等(2)に係るAによる治療費の支払と上記2(1)に係るB医師の説明義務違反との間に相当因果関係を認めることはできない。」

「上記2(1)に係るB医師の説明義務違反により、Aは、同人が本件自家がんワクチン療法を受けることの現実的なメリット・デメリットを理解した上で、本件自家がんワクチン療法を受けるか否かを判断する機会を奪われ、これによる精神的苦痛を被ったものと認められる。」

「上記2(1)に係るB医師の説明義務違反によりAが被った精神的損害に対する慰謝料は、100万円と認めるのが相当である。」