最近の労使間トラブルに関する裁判例


裁判例62: 労災保険法上の労働者の意義

東京地方裁判所平成30年5月31日判決(判例タイムズ1467号194頁)

 

本件は、義父と同居し、その営む事業に従事していた原告が、作業中に負傷したため労災給付を申請したところ、労基署が、原告を労災保険法上の「労働者」に該当しないとして不支給決定したため、その処分取消しを求めた事案である。

 

 裁判所は、以下のように述べて、原告の訴えを棄却した。

 

 まず、労災保険法上の「労働者」が労基法と共通する概念であると述べたうえで、「労基法116条2項…の趣旨は、同居の親族のみを使用している事業においては、事業主とその親族双方が、当該事業の経営によって私生活を営んでおり、その同居の親族は、事業主の利益の全部または一部に資するために従事しているものであり、事業主とともに事業経営側の立場にあるといえるため、使用従属関係を認めることができないから…同居の親族のみを使用する事業における親族は、労基法上の親族に当たらない」とする。

 

 他方で、「同居の親族を使用する事業であっても、常時同居の親族以外の者を使用する事業が存在するところ、そのような場合に、当該同居の親族とその他の者が同一事業主による指揮命令を受けて事業に従事し、両者の労働条件が同様で、使用従属関係に基づく労務の提供の対価として賃金を得ており、事業主と当該同居の親族との関係が一般の場合と同様の労働関係と認められるのであれば…労働者性も肯定することができる。しかしながら…親族以外の者の…使用が常時でない場合は…親族以外の者の労務の提供なくして事業を営むことができるため…同居の親族の労働者性を肯定することはできない」とも述べる。

 

 そのうえで、本件の原告の地位について、原告の義父に対する家計費と、義父の原告に対する給与の支払い状況、労働条件の不明示、原告のローンを義父が実質的に負担していたなどの事情に照らして、原告家族と義父家族は「別個独立して生計を営んでいたとは認められず、生計を同じくする関係にあり…同居の親族に当たる」とする一方、「本件事業場には常時使用されていた者は原告以外にはおらず…臨時労働者は年間で延べ30人程度であったことなどの事情を総合すると…原告以外の労働者を使用していた時期は一時的であったものといえる」と認定する。

 

 よって「本件事業場は、本件事業主を経営者とする家族経営の事業であり、常時同居の親族以外の労働者を使用する事業には当たらないから…労基法116条2項の趣旨等を併せ考慮すると…原告を労災保険法…上の労働者と認めることはできない」とした。