最近の労使間トラブルに関する裁判例


裁判例15:会社の歓送迎会参加後の交通事故と業務起因性

最高裁判所平成28年7月8日判決(ジュリスト1505号228頁)

 本件は、上司の要請により、業務を途中で中断して歓送迎会に参加し、その帰社途中に交通事故に遭って死亡した労働者Aの配偶者が労災保険法の遺族補償給付等を求めた事案 である。

 最高裁は、労働者の負傷、疾病、障害または死亡が労働者災害補償保険法に基づく業務災害に関する保険給付の対象となるには、それが業務上の事由によるものであることを要するところ、そのための要件の一つとして、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態において当該災害が発生したことが必要であると解するのが相当であるとした(十和田労基署長事件・最判昭和59年5月29日)。

 労働者Aは、上司の意向により、歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ、その結果、歓送迎会終了後に業務を再開するために工場に戻ることを余儀なくされたものであり、会社から見ると、労働者Aに対し、職務上一連の行動をとることを要請していたものといえる。

 歓送迎会は、会社の事業活動に密接に関連して行われた。

 労働者Aが研修生らを送ったことは、飲食店から工場へ戻る経路から大きく逸脱するものではなく、会社から要請された一連の行動の範囲内のものであった。

 本件交通事故による労働者Aの死亡は、業務上の事由による災害にあたる。