最近の労使間トラブルに関する裁判例


裁判例11:自家用車での帰宅途中の交通事故と使用者の責任

前橋地方裁判所高崎支部平成28年6月1日判決(判例タイムズ1434号245頁)

 本件は、被告(会社)の被用者が工場での勤務を終え、自家用車で帰宅する途中、原告が運転する車に追突し、原告を負傷させたことから、原告が被告(会社)に対し、使用者責任に基づく損害賠償を請求した事案である。なお、被用者には任意保険に加入していなかったという事情があった。

 前橋地方裁判所高崎支部は、被用者宅から被告の工場に赴く際、電車を使用した際の時間的経済的負担、徒歩や自転車使用の場合の肉体的負担や事故等の危険性、被告の工場における自動車通勤者の圧倒的割合、及び、群馬県における自動車利用の状況を総合するならば、被用者が、通勤に自動車を使用することは、ほとんど通勤方法として代替性のないこというべきである。したがって、被用者による工場への通勤のための自動車運転は、被告の事業の執行についてなされているものといえ、この理は、帰宅のための自動車運転でも変わらないというべきである。

 以上により、被告は民法715条の使用者責任を負うとして、原告の請求を一部認容した。