知的財産権に関する裁判例

1:混同を生ずるおそれがある商標


知的財産高等裁判所平成29年10月24日判決(判例タイムズ1448号118頁 )

 本件は、第18類「皮革、かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、かばん金具」を指定商品とする、被告の本件商標登録を無効にすることを求める原告の審決請求について、特許庁がした請求不成立審決の取消しを求める事案である。

 高等裁判所は、「①本件商標は、外観や称呼において引用商標と相違するものの、本件商標からは、豊岡市で生産された柳細工を施した製品という観念を生じ得るものであり、かかる観念は、引用商標の観念と類似すること、②引用商標の表示は、独創性が高いとはいえないものの、引用商標を付した原告商品は、原告の業務を示すものとして周知性を有しており、伝統的工芸品の指定を受け、引用商標が地域団体商標として登録されていること、③本件商標の指定商品は、原告商品と同一又は密接な関連性を有するもので、原告商品と取引者及び需要者が共通することその他被告の本件商標の使用態様及び需要者の注意力等を総合的に考慮すれば、本件商標を指定商品に使用した場合は、これに接した取引者及び需要者に対し、原告の業務に係る「豊岡默杞柳細工」の表示を連想させて、当該商品が原告の構成員又は原告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され、商品の出所について誤認を生じさせるとともに、地域団体商標を取得し通商産業大臣から伝統的工芸品に指定された原告の表示の持つ顧客誘引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を生じかねない。そうすると、本件商標は、商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に当たると解するのが相当である。」と判示して、審決を取り消した。