最近の労使間トラブルに関する裁判例


裁判例42: 労働者性

  

 

京地方裁判所平成29年5月17日判決(判例タイムズ1459号172頁)

 

 本件は、建築業者であった被告が副業として開始する洋裁店に、別主体の店で店長まで務め洋裁の技術を有していた原告が働くことになり、一人でほぼ一切の業務をこなしていたところ、その後原告が退職するにあたり、未払い賃金の支払いを求めた事案である。被告は、原告は共同経営者であって、原告に賃金を支払う義務はないと主張して争った(その他の反訴や別請求は省略)。

 

 裁判所は、被告が「これまで洋裁に関係する業務を一切行ったことがな」く、原告に対し、経理事項以外の「業務の遂行方法等について被告らの指揮監督を受けていたとは認められない」こと、「原告の出退勤時刻や休憩時間を管理していた者は」いないこと、被告から原告に対する金銭支給は「固定されているように見える」が、「売上の上昇に応じて」変動していくものであったこと、被告の店であるのに、店名は原告のかねてからの念願に沿って、原告の名前に由来するものとされたこと、原告は「店舗の場所や開店日を被告に提案」するなど「開店準備に主体的に関与している」ことなどを認定して、「本件店舗は、原告と被告らとの共同経営の合意に基づいて運営されていたと解するのが相当である」と判断して、賃金請求を退けた。