最近の労使間トラブルに関する裁判例


裁判例59: ウィルス性心筋炎と労災

大阪地方裁判所令和元年5月15日判決(判例タイムズ1467号158頁)

 

 本件は、レストラン従業員であった夫が死亡したのは、長時間労働等の過剰業務が原因であると主張して、その妻が、労基署による各種給付金の不支給処分の取消しを求めた事案である。

 

 裁判所は、以下のように述べて、夫の発病の業務起因性を認めて処分を取消した。

 

 まず、夫の死因となったウィルス性の劇症型心筋炎について、医学的な認定基準が、「恒常的な長時間労働の負荷が…作用した場合には、疲労の蓄積が生じ…疾患等を発症させることがある…。…発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月おおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合には、業務と発症との関連性が強いと評価できるとの考えに立脚している」ことなど、各種資料が長期の時間外労働を指標としていることを指摘する。

 

 次に、夫の労働環境について、出退勤記録や仕事上の役割を詳細に認定した上で、本件疾病の発病前12ヶ月間に夫が「平均して1か月当たり約250時間の著しく長い時間外労働を含む長時間労働への従事」していたこと指摘する。

 

 そのうえで、「客観的にみて、本件疾病の発症は…(夫の)…業務に内在する危険が現実化したものであるといえ…長時間労働と本件疾病発症との間に因果関係…があると認められる」と述べて、労基署の処分は違法であるとした。