最近の労使間トラブルに関する裁判例


裁判例34:自殺と労災保険法の業務上の死亡

大阪高等裁判所平成29年9月29日判決(判例タイムズ1450号50頁)

 本件は、高速道路の巡回、管制、取締等交通管理業務を行うことを主な業務内容とする会社に勤務し巡回等の業務に従事していた労働者が平成24年5月下旬に自殺したことに関して、自殺した労働者の親が、労働基準監督所署長がした労災保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料を支給しないとの決定(処分)の取消を求めた事案である。

 大阪高等裁判所は、以下のとおり判示して、亡労働者の死亡が業務に起因するものであり、労災保険法にいう業務上の死亡にあたるとし、原判決及び上記各不支給決定を取り消した。

 亡労働者は、本件自殺当時、精神障害によって正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、あるいは自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥っていた可能性が高いこと、本件において、本件各出来事のほかには、亡労働者が精神障害を発症する原因となる可能性のある、業務以外の心理的負荷に係る具体的事実や亡労働者の個体側要因に係る具体的事実の存在はうかがわれないこと等によれば、亡労働者は、本件各出来事による心理的負荷によって、本件自殺の直前頃、うつ病を発症したことを推認することができる。