東京地方裁判所平成30年6月29日判決(判例タイムズ1477号243頁)
「原告が本件土地の占有中、真の所有者であれば通常は取らない態度を示し、又は所有者であれば当然取るべき行動に出なかったなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったと認められる事情(他主占有事情)があるか否かについて検討する。」
「東京都が国の機関として本件空港用地の現所有者に対して賃貸借契約を締結するなどの方法で補償し、後に当該土地を買収したことをもって外形的客観的にみて、上記期限までにWから補償の申請のなかった本件土地についてまで、真の所有者であれば通常は取らない態度を示したなどということはできない。よって、この点については、原告がその所有権を排斥して占有する意思を有していなかったと解される事情に当たるとは認められない。」
「民法186条1項により、占有者は平穏に占有をするものと推定されるから、平穏な占有を争う者が平穏な占有でないことを立証する必要があるところ、同法162条2項にいう平穏な占有とは占有者がその占有を取得し、又は、保持することについて、暴行脅迫などの違法強暴の行為を用いていない占有をいうと解すべきである(最高裁昭和41年4月15日判決)。」