最近の労使間トラブルに関する裁判例


裁判例68:高齢者雇用安定法に沿った継続雇用制度のある企業の更新拒絶

東京地方裁判所平成30年6月12日判決(判例タイムズ1470号157頁)

 

 本件は、被告たる企業で定年後に、期間1年の有期雇用契約再雇用された原告が、翌年の更新については、被告の再雇用制度上の要件を満たさないとして拒絶されたため、労契法19条2号を根拠に更新されたと主張して、労働者たる地位の確認を求めた事案である(他請求は割愛。)。

 裁判所は以下の様に述べて、この請求は認容した。

 まず、被告の再雇用制度成立の経緯を、その根拠となる労使協定の交渉過程に照らして詳細に認定し、「本件労使協定が締結された当時、被告の社内において…達成度評価が…全従業員の平均点以上ないし…(中間の点数)…以上でなければ、本件人事考課基準を充足したことにはならない旨の説明がなされたことを窺わせる形跡」がないことや、「原告より前に定年を迎えた社員について、本件人事考課基準に照らして再雇用の当否を判断した事例が存在しなかったのであり、本件人事考課基準が再雇用の対象者を厳しく限定する基準として機能してきた実績も存在しない」ことを指摘する。

 そのうえで、これに「加え、本件労使協定に基づく再雇用制度は、高齢法上の高年齢者雇用確保措置の1つである継続雇用制度として設けられたことを踏まえると、本件人事考課基準…(では)…むしろ…大半の従業員が達成しうる平凡な成績を広く含む趣旨と解すべきであるし、「過去3年間の人事考課結果が普通の水準であること」というのは…3年連続で…あることを要求するものではなく、過去3年間を通じて評価した場合に「普通の水準」以上であれば足りるという趣旨と理解するのが合理的である」とし、原告はこの水準を充足すると判断した。

 次に、高年法9条1項が定年制を定める企業について、65歳までの安定した雇用確保のため、雇用確保措置を求めており、その中に継続雇用制度の導入を選択しとして示していること、及び被告の就業規則が再雇用制度を定めていることから、「本件再雇用契約を締結した原告については、同契約が65歳まで継続すると期待することについて…合理的な理由があるものと認め」た。

 そして、「本件再雇用契約の終期…の時点において、原告は、本件人事考課基準を含む本件再雇用基準に含まれる全ての要素を充足していたから、本件雇止めは、合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められないものといえ、労働契約法19条2号により、同一の労働条件で本件再雇用契約が更新されたものといえる」とした。