債権譲渡(担保)・債権回収に関して押さえておきたい裁判例

裁判例10:取立権限を譲渡人に留保した集合債権譲渡担保の有効性

最高裁平成13年11月22日判決

 甲が乙に対する金銭債務の担保として、発生原因となる取引の種類、発生期間等で特定される甲の丙に対する既に生じ、又は将来生ずべき債権を一括して乙に譲渡することとし、乙が丙に対し担保権実行として取立ての通知をするまでは、譲渡債権の取立てを甲に許諾し、甲が取り立てた金銭について乙への引渡しを要しないこととした甲乙間の債権譲渡契約は、いわゆる集合債権を対象とした譲渡担保契約といわれるものの一つであり、このとき、既に生じ、又は将来生ずべき債権は、譲渡担保権者に確定的に譲渡されているが、その一部の債権について設定者への取立権限の付与等がなされていると見るべきであるから、当該債権譲渡について第三者対抗要件を具備するためには指名債権譲渡の対抗要件の方法によることができる。その際、譲渡担保設定者に付与された取立権限の行使への協力を第三債務者に対し依頼しても、対抗要件具備の効果は妨げられない。

(解説)

 本判決は、担保目的の債権譲渡において、既存の債権と将来債権が、ともに確定的に譲渡されているという理解を示した。また、取立ての通知まで譲渡人に取立権限を留保した点は、第三者対抗要件の効果を妨げるものではないとした。