民事再生法の条文ポイント

第31条(担保権の実行手続の中止命令)


1 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、再生債権者の一般の利益に適合し、かつ、競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、相当の期間を定めて、第53条第1項に規定する再生債務者の財産につき存する担保権の実行手続の中止を命ずることができる。ただし、その担保権によって担保される債権が共益債権又は一般優先債権であるときは、この限りでない。

2 裁判所は、前項の規定による中止の命令を発する場合には、競売申立人の意見を聴かなければならない。

3 裁判所は、第1項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。

4 第1項の規定による中止の命令及び前項の規定による変更の決定に対しては、競売申立人に限り、即時抗告をすることができる。

5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

6 第4項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。 

ポイント解説: 

 担保権の実行について一切の制約がないものとすると、再生債務者の事業または経済生活の再生のために必要不可欠な財産が失われ、再生債務者の再生が困難となるほか、再生債権者の一般の利益に反する場合もあり得る。そこで、再生債務者が担保権者と交渉し、被担保債権の弁済方法等(弁済方法のほか、代替担保の提供、担保物件の処分時期・方法等)について合意による解決を図るための時間的猶予を与えるなどのために、担保権の実行として競売手続を一時的に中止することができる制度が設けられたものである。