最近の労使間トラブルに関する裁判例


裁判例46: 実態と異なる賃金算定方法を定めた就業規則

福岡地方裁判所平成30年9月14日判決(判例タイムズ1461号195頁)

 

 本件は、長距離トラック運転手が、会社に対し未払い賃金の支払いを求めた事案である(その他の請求及び反訴は省略)。これに対して会社は、原告請求の根拠となる就業規則は、会社がトラック事業を始める以前に作成されたものであって運転手には適用されないと反論した。

 

 裁判所は、以下のように述べて、この請求については認容した。

 

 まず、労働契約法7条を確認した上で、本件会社の就業規則が「会社に勤務するすべての従業員に適用する。ただし、パートタイマー等就業形態が特殊な勤務に従事する者について、その者に適用する特別の定めをした場合はその定めによる。」と定めていることから、本件就業規則につき、「長距離トラック運転手について「特別の定め」はないから、文言上、長距離トラック運転手にも適用されるものとなって」おり、その内容は法に反せず長距離トラック運転手に不利益をもたらすものではないから、合理的なものであって、運転手と会社が「異なる労働条件を合意したものと認められない限り、本件労働契約の内容となる」とした。

 

そして、就業規則がトラック事業開始前に作成されたものである点については、「そもそも、就業規則の契約内容規律効を認める前提として、合理」性が求められる趣旨は、就業規則が個別の労働者の合意によらず拘束力を及ぼすことから、「その拘束力を制限して労働者の権利を保護することにあ」り、「就業規則を定めた使用者におい」て、「労働者との個別の合意がないにもかかわらず、就業規則が合理的な労働条件ではないことを理由として、自らその拘束力を否定するのは禁反言の法理に反する」とした。