信託法の条文ポイント

第20条(信託財産に属する財産についての混同の例外)


1 同一物について所有権及び他の物権が信託財産と固有財産又は他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合には、民法第179条第1項本文の規定にかかわらず、当該他の物権は、消滅しない。

2 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が信託財産と固有財産又は他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合には、民法第179条第2項前段の規定にかかわらず、当該他の権利は、消滅しない。

3 次に掲げる場合には、民法第520条本文の規定にかかわらず、当該債権は、消滅しない。

(1) 信託財産に属する債権に係る債務が受託者に帰属した場合(信託財産責任負担債務となった場合を除く。)

(2) 信託財産責任負担債務に係る債権が受託者に帰属した場合(当該債権が信託財産に属することとなった場合を除く。)

(3) 固有財産又は他の信託の信託財産に属する債権に係る債務が受託者に帰属した場合(信託財産責任負担債務となった場合に限る。)

(4) 受託者の債務(信託財産責任負担債務を除く。)に係る債権が受託者に帰属した場合(当該債権が信託財産に属することとなった場合に限る。)

(ポイント解説)
 信託財産と受託者の固有財産または他の信託の信託財産は、それぞれ利益の実質的帰属主体を異にしている。そこで、本条は、旧18条と同様に、これらの財産の間で混同による権利の消滅が生じないようにするために定められた。ただし、混同による消滅が生じる場合は、旧18条が定める場面以外にもあることから、本条は、混同の例外が生じる場合を、より仔細に規定した。

 信託財産に属する債権に係る債務が受託者に帰属した場合(たとえば、債務引受等により、受託者自身が信託財産に属する債権の債務者となった場合)には、当該債権は、混同により消滅しない(3項1号)。この場合、信託財産に属する債権に係る債務の引当てとなるのは、受託者の固有財産だけだからである。しかし、信託財産に属する債権に係る債務が当該信託の信託財産責任負担債務となった場合には、当該債務は、信託財産を引当てとするので、債権・債務は混同により消滅する(3項1号かっこ書)