1 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、前条第1項の規定による中止の命令によっては再生手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、すべての再生債権者に対し、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等の禁止を命ずることができる。ただし、事前に又は同時に、再生債務者の主要な財産に関し第30条第1項の規定による保全処分をした場合又は第54条第1項の規定若しくは第79条第1項の規定による処分をした場合に限る。
2 前項の規定による禁止の命令(以下「包括的禁止命令」という。)が発せられた場合には、再生債務者の財産に対して既にされている再生債権に基づく強制執行等の手続は、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、中止する。
3 裁判所は、包括的禁止命令を変更し、又は取り消すことができる。
4 裁判所は、再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、再生債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、第2項の規定により中止した再生債権に基づく強制執行等の手続の取消しを命ずることができる。
5 包括的禁止命令、第3項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
7 包括的禁止命令が発せられたときは、再生債権については、当該命令が効力を失った日の翌日から2月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。
ポイント解説:
再生手続開始の決定があったときは、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等の申立ては当然に禁止され、すでにされている再生債権に基づく強制執行等の手続は中止する(法39条1項)。再生手続開始前であっても、再生債務者の財産の散逸を防止し、その事業の継続を円滑に行うためには、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等を中止すべき場合がある。そこで、裁判所は、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、個別に強制執行等の中止を命じることができる(法26条1項2号)。しかし、このような個別の中止命令では再生手続の目的を十分に達成できない場合がある。そこで、本条は、再生手続開始決定前の段階においても、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等を包括的に禁止する制度を設けた。