近時の重要判例


元請人の安全配慮義務違反と過失相殺

松山地方裁判所宇和島支部令和2年11月13日判決(判例タイムズ1490号222頁

「原告に潜水作業を下請させる被告Wとしては、本件潜水作業が建設工事に当たるものではないとしても、被告漁協から作業現場の概要、作業の内容、水深等の必要な情報を予め聴き取り、被告漁協との間で作業計画(潜水作業のスケジュール)を策定して、この作業計画を潜水作業に従事する原告や、減圧の知識に乏しい、作業に立ち会う被告漁協の関係者に周知されるよう手配したり、あるいは少なくとも、例えば、最初の潜水作業後に確保すべき休憩時間を設定し、これを被告漁協の関係者に周知されるよう手配するなどして、再度の潜水が必要な場合には十分な休憩時間を確保し、再度の潜水が危険な場合には作業当日の潜水が回避できるようにし、原告をして安全な潜水作業を実行できるようにすべき安全配慮義務を負っていたものというべきである。にもかかわらず、被告Wは上記措置を講ずることなく、原告に再潜水前に2時間以上の休憩をとるように注意を前もって与えておいただけで、作業前までにこの注意を念押しするなどすることすらなく、原告を漫然と本件潜水作業に従事させたものであったことから、被告Wには原告に対する安全配慮義務違反があったものというべきである。」「結局、前記のとおりの被告Wの安全配慮義務違反の内容、程度のほかに、被告Wが原告に対し、水深50メートルを超える潜水作業をした後に、再度同様の深度まで潜水する場合には2時間以上の休憩をとるよう一般的な指示を与えていたことも勘案すると、当事者間の損害な公平の分担の趣旨から、原告の損害については、6割の過失相殺をするのが相当である。」