最近の労使間トラブルに関する裁判例


裁判例23:アイドルがファンと性的関係を持つ行為と損害賠償責任

東京地方裁判所平成28年1月18日判決(判例タイムズ1438号231頁)

 本件は、アイドルがファンと性的関係をもった行為が契約に違反するとして、芸能プロがアイドルに対して損賠賠償請求等をした事案である。

 東京地方裁判所は、以下のとおり判示して、請求を棄却した。

 他人に対する感情は人としての本質の一つであり、恋愛感情もその重要な一つであるから、かかる感情の具体的現れとしての異性との交際、さらには当該異性と性的な関係を持つことは、自分の人生を自分らしくより豊かに生きるために大切な自己決定権そのものであるといえ、異性との合意に基づく交際(性的な関係を持つことも含む。)を妨げられることのない自由は、幸福を追求する自由の一内容をなすものと解される。とすると、少なくとも、損害賠償という制裁をもってこれを禁ずるというのは、いかにアイドルという職業上の特性を考慮したとしても、いささか行き過ぎな感は否めない。

 原告である芸能プロが、被告であるアイドルに対して、性的関係を持ったことを理由に損害賠償を請求できるのは、被告が原告に積極的に損害を生じさせようとの意図を持って殊更にこれを公にしたなど、原告に対する害意が認められる場合等に限定されるべきである。